副甲状腺機能亢進症と骨粗鬆症
症状・所見
- 高カルシウム(Ca)血症(頭痛、のどが乾く、胸焼け、吐き気、食欲低下、便秘、精神的にイライラ、疲れやすい、筋力低下など)
- 骨粗鬆症(骨がもろく、骨折しやすくなり、身長が縮んだりする)
- 尿路結石(腎結石)
- 動脈硬化や心臓弁膜症・関節炎
検査・診断
a.血液・尿検査 | 血清Ca、血清リン(P)、副甲状腺ホルモン値(PTH)、ALP、骨型ALP(BAP)、TRACP-5b、尿中Caなど |
b.画像検査 | 超音波、CT、MRIで腫大した副甲状腺を同定 |
c.機能画像 | アイソトープ検査(副甲状腺シンチグラフィ:MIBIシンチグラフィ) |
d.(参考) | 遺伝性を疑う場合には遺伝子検査を行う場合があります。 |
(A) 原発性副甲状腺機能亢進症(腺腫・癌・過形成)
どんな病気?
副甲状腺は、甲状腺の裏側にある米粒くらいの大きさの臓器です。一般的に血液中のCaの濃度は、8.8~10.1mg/dlの間に調節されています。通常は甲状腺の裏に左右上下一つずつ、合計4個あります。しかし、副甲状腺の数や位置には個人差があり、副甲状腺が5つ以上の場合、あるいは3つしかないこともあります。
正常の副甲状腺は小さいため超音波などの検査で確認することは困難です。副甲状腺腫瘍では、腫大した副甲状腺からPTHの過剰分泌によって、血液中のCa濃度が上昇し、骨粗しょう症、尿路結石や高Ca血症によるさまざまな症状を引き起こします。約4,000~5,000人に1人の割合で発見される病気ですが、多くは良性で、がんの割合は1%以下で非常に希です。MEN1やRET遺伝子の変異による過形成で高Ca血症を来すこともあります。
治療
根本的な治療法は、手術により腫大した副甲状腺病変の摘出です。血中Caの値が11㎎/dl以上、骨粗鬆症やクレアチニンクリアランス低下(60ml/min)があれば、手術療法の適応となります。症状がない血中Ca値上昇が軽度の症例では、経過観察する場合もあります。切除可能な原発性副甲状腺機能亢進症の治療において、薬による保険診療の適応はありません。高Ca血症になると脱水になりやすいので、よく水分をとる必要があります。
(B) 続発性副甲状腺機能亢進症(過形成)
どんな病気?
副甲状腺そのものではなく、慢性腎不全・透析状態、くる病やビタミンD欠乏症など副甲状腺以外の病気が原因でPTHが過剰に分泌され、骨からカルシウムが失われる病気を、続発性副甲状腺機能亢進症といいます。中でも長期腎機能低下に伴う腎性副甲状腺機能亢進症がよく知られています
慢性腎不全になると腎臓でのリンの排泄ができなくなり(高P血症)、腸管からのカルシウムの吸収が低下します。慢性腎不全の人は血液中のカルシウムが低下し、リンが上昇しますが、この状態は副甲状腺を刺激し、PTHの分泌を促します。そして長期間刺激され続けた副甲状腺は腫大し、やがて血液中のCaの値に関係なくPTHが過剰に分泌され、骨吸収を進行させます。
治療
食事療法やリン吸着剤の内服、血液中のカルシウムが低下している場合はカルシウム製剤の内服、活性型ビタミンD3の内服または静脈内投与などで線維性骨炎を予防します。病気の進行に合わせて、内科的治療として、シナカルセト(レグパラ®)、エテルカルセチド(パーサビブ®)、エボカルセト(オルケディア®)を投与します。内科的治療にもかかわらず病状が進行してしまう場合や、副作用などで継続が困難な場合は、手術療法が考慮されます。手術療法では、副甲状腺を全て摘出し、摘出した副甲状腺の一部を前腕に移植する方法が標準的です。